時系列データは、日々のビジネスや科学、医療などの様々な分野で収集され、分析されています。このようなデータの中から意味のあるクラスタを抽出するために、「時系列クラスタリング」と呼ばれる手法が活用されています。本記事では、時系列クラスタリングでよく用いられる手法とその特徴に焦点を当て、データ分析の新たな視点を提供します。
時系列クラスタリングの基本概念
時系列クラスタリングは、時系列データ内の類似したパターンを同じクラスタにグループ化するための手法です。データ内の時系列が同じクラスタに所属することで、パターンやトレンドを理解しやすくなり、より適切な意思決定が可能となります。以下では、主に以下の手法とその特徴を取り上げます。
Dynamic Time Warping (DTW)
特徴
- 動的な時間の歪みを考慮し、異なる速度で変動する時系列データの類似性を評価する。
- 非線形性への対応があり、異なる長さの時系列を比較することができる。
使用例
- 音声認識や手書き文字認識において、異なる速度で発生するパターンの同定。
- 医療データで異なる患者の生体信号を比較し、異常検知や診断に利用。
K-Means Clustering
特徴
- データをk個のクラスタに分割する手法で、各クラスタの中心を求めることでデータをグループ化する。
- 各時点の値を特徴量として扱い、異なる変動パターンを持つ時系列データをクラスタリングする。
使用例
- 小売業で商品の販売データをクラスタに分け、同じ販売トレンドを持つ商品を同じグループにまとめる。
- エネルギー使用データをクラスタに分類し、異なるエネルギー使用パターンを理解して最適な消費戦略を策定。
Hierarchical Clustering
特徴
- データを階層的に結合してクラスタを形成し、シーケンシャルな情報を有効に利用する。
- デンドログラムと呼ばれる樹形図を生成し、異なる階層構造からクラスタを選択することができる。
使用例
- ウェブトラフィックデータの解析において、ユーザーの行動パターンをシーケンシャルにクラスタリングし、ウェブマーケティング戦略を構築。
- 医療分野で患者の生体データをクラスタに分け、異なる健康状態を理解して治療戦略をカスタマイズ。
DBSCAN (Density-Based Spatial Clustering of Applications with Noise)
特徴
- 密度に基づいてクラスタを形成し、データ内の異常値を検知する。
- 非線形なクラスタを検出するのに適しており、任意の形状のクラスタを識別できる。
使用例
- 製造業において生産ライン上のデータをモニタリングし、異常なパターンをクラスタリングして品質管理を向上させる。
- グリッドデータ内の異常を検知して、セキュリティ監視などに応用。
おススメのPythonライブラリ
tslearn
tslearnは時系列データの機械学習に特化したライブラリで、クラスタリング、分類、回帰などのアルゴリズムを提供しています。特にクラスタリングにおいては、動的時間伸縮(DTW)などの距離測定をサポートしており、時系列データの特性を考慮したクラスタリングが可能です。
sktime
sktimeは時系列データの解析と予測のための統一的なフレームワークです。クラスタリングだけでなく、時系列の分類、回帰、変化点検出など、幅広い機能を提供しています。
hdbscan
hdbscanは高密度領域に基づくクラスタリングを行うライブラリで、特にノイズの多いデータやクラスタ数が事前にわからない場合に有効です。時系列データに適用する場合には、事前に特徴抽出を行うことが一般的です。
まとめ
これらの手法は、それぞれ異なる特徴を持ち、様々なシナリオで有効に活用されています。時系列クラスタリングは、これらの手法を組み合わせたり、適切に選択することで、データから隠れた構造やパターンを明らかにし、ビジネスや研究における意思決定をサポートする重要なツールとなっています。データサイエンスの進展により、今後ますます洗練された手法が登場し、新たな分野への適用が期待されています。
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